私の日常生活で起こったことを書き込んでいきたいと思います


by inoueshika

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1本の電話

私の診療所は小児歯科もやっており、私自身も小児歯科専門医の肩書きを持っております。
時々講演の依頼もあるのですが、それを聞いてくださった方が、
「どこの歯科医院でも治療してもらえないので、最後だと思ってここに来ました」
と言って来院されました。患者さんは5歳になる男の子で、治療イスに座ることもできず、お母さんに抱きついたままです。無理にイスに座らせようとすると大声で泣き叫び、またお母さんに抱かれるということを繰り返しました。
私も最後はイライラして
「うちでも治療は無理です。子供が頑張ればお母さんがよくやったと抱いてやり、できなければ突き放す。けじめをつけなければいつまでたっても治療することはできないと思います。」
と言って帰ってもらいました。
しかし夜になってこのことを思い出し、この子供への処置は正しかったのかと考えたとき、もう一度チャレンジするべきだと思い、患者さんの家へ「もう一度治療させていただけませんか」と電話をしました。お母さんも喜んで来院してくれると約束してくれました。
それから三ヶ月、今は歯さえ削らなければ自分で口を開けて虫歯予防の薬を塗ることができるようになっています。もう少しすれば、虫歯の治療をすることができるようになるでしょう。あの電話をかけなければ、彼は一生歯科治療を嫌い、虫歯だらけの大人になるかもしれませんでした。
現在、家族全員が私の診療所の患者さんです。
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by inoueshika | 2006-10-12 00:05